ハヤシライスの知られざる歴史

日本の「ご飯にかける洋食」といえば、真っ先に思い浮かぶのはカレーライスでしょう。
しかし、その陰で独自の進化を遂げ、明治時代のハイカラな雰囲気を今に伝える料理があります。
それが「ハヤシライス」です。
薄切りの牛肉と玉ねぎを、デミグラスソースやトマトソースで煮込み、ご飯にかけて食べる。
誰もが知っている定番メニューですが、実はその誕生には、いまだに解明されていない謎があります。
今回は、ハヤシライスにまつわる3つの疑問を紐解いてみましょう。
ハヤシライスの「ハヤシ」って誰?
最も有名なのは、丸善の創業者である早矢仕有的(はやし・ゆうてき)が考案したという説です。
医師でもあった早矢仕氏が、友人たちに肉や野菜を煮込んだ料理をご飯と一緒に振る舞ったところ、評判になったというものです。
「早矢仕さんのライス」が、やがてハヤシライスになったといわれています。
一方、英語の「ハッシュドビーフ・ウィズ・ライス」が訛って「ハヤシライス」になったという説もあります。
ほかにも、洋食店の料理人「林さん」が考案したという説など、名前の由来には複数の説があり、決定的な答えは出ていません。
いつから食べられているのか?
文献上の古い記録は、1888年(明治21年)に出版された『軽便西洋料理法指南』にあります。そこには「ハヤシビフ」という料理が登場します。
ただし、当時は現在のようにご飯にかけるスタイルではなく、西洋料理の一品でした。
その後、明治30年代後半には、洋食店でハヤシライスが食べられるようになっていきます。
明治の人々にとって、ハヤシライスは新しい時代を象徴するモダンな洋食だったのかもしれません。
カレーライスとは何が違う?
実は、カレーライスのほうが日本での歴史は古く、1872年(明治5年)の料理本にレシピが登場しています。
カレーは軍隊食としても採用され、軍隊生活を経験した人々などを通じて全国に広がりました。
一方、ハヤシライスは都市部の洋食店やカフェを中心に普及していきました。
料理としての違いも興味深いところです。
カレーがスパイスの組み合わせによって複雑な風味を生み出すのに対し、
ハヤシライスは牛肉や玉ねぎを炒め、煮込むことで素材の旨味とコクを引き出します。
どちらも好き!
国民食として全国に広がったカレーライスと、
洋食文化の中で独自の地位を築いたハヤシライス。
同じようにご飯にかけて食べる料理でも、その歩んできた歴史はずいぶん違います。
普段何気なく食べているハヤシライスにも、
明治時代の文明開化や洋食文化の広がりが詰まっています。
次に食べるときは、120年以上前の東京の洋食店に思いを馳せてみるのも面白いかもしれません。





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