園芸業界の悪しき薄利多売。お互いに首を絞め合う商売の果てに

「安く売ること」が正義だった時代
「いいものを安く売る」。
これは商売の鉄則ともいえる考え方です。
バブル期から、その後の長いデフレ時代にかけて、
日本ではいかに安く仕入れ、安く販売するかが商売の大きな焦点になっていました。
薄利多売というビジネスモデルが成り立っていた時代です。
園芸業界も例外ではありません。
生産者はできるだけ安く出荷し、
市場は安く仕入れ、
小売店は安く販売する。
少しでも価格を下げることが競争力につながり、
安さこそがお客様に選ばれる理由になっていました。
しかし、時代は変わりました。
世界情勢の不安定化やエネルギー価格の上昇、
資材費や物流費の高騰など、
商売を取り巻く環境は良くも悪くも大きく変化しています。
日本でも物価上昇が続き、金利も上昇局面に入りました。
こうした時代に、昔と同じ感覚で薄利多売を続けていくことは、本当に正しいのでしょうか。
値上げできない商売は、やがて行き詰まる
長年、薄利多売を続けてきた事業者の中には、
利益を削り、自分たちが身を切ることで価格を維持してきたところも少なくないでしょう。
仕入れ価格や経費が上がっても、販売価格は据え置く。
利益が減っても、値上げすればお客様が離れてしまうのではないかと考え、
なかなか価格を変えられない。
しかし、それでは事業を続けるほど経営が苦しくなってしまいます。
30年近く続いたデフレや低価格競争の中で、
価格を上げずに商売を続けることが当たり前になり、
急激な環境の変化に対応できなくなっているのではないでしょうか。
もちろん、安さを求めるお客様の気持ちも理解できます。
私自身、買い物に行くときには
安くて良いものがあれば魅力を感じます。
ただし、安さを実現するために必要なのは、単純に利益を削ることだけではありません。
仕入れや生産、販売の効率化によってコストを抑える方法もあります。
それでも対応できないのであれば、価格そのものを見直す必要があります。
利益を確保できなければ、
設備への投資も、人材の確保も、技術の継承もできません。
目先の安さを守ることが、結果として事業の将来を奪ってしまうのです。
安く売るだけでは、お客様の満足につながらない
安く仕入れた商品を、安く売る。
一見、簡単な商売に思えます。
しかし、価格だけで勝負するのであれば、
資本力のある大手や大量販売ができる事業者に
個人事業者はなかなか太刀打ちできません。
そこで必要になるのが、付加価値です。
例えば、園芸店で花苗を販売する場合、
単に苗を並べて売るだけではなく、
育て方を説明する、
相性の良い植物を組み合わせる、
季節に合った寄せ植えを提案する、
購入後の管理方法を伝える。
こうした取り組みも立派な付加価値です。
安く購入した花苗を、育て方がわからず枯らしてしまった経験がある方もいるでしょう。
せっかく購入した植物がすぐに枯れてしまえば、
お客様にとってはお金の無駄になり、
園芸そのものがつまらないものになってしまうかもしれません。
一方、少し価格が高くても、適切なアドバイスがあり、
長く花を楽しめたらどうでしょうか。
お客様の満足度は高まり、次の購入にもつながります。
大切なのは、商品を安く売ることだけではなく、
購入した後の満足まで提供することです。
そのためには、販売する側にも知識や技術、経験が必要です。
もちろん、付加価値を提供するには時間も労力もかかります。
だからこそ、その価値を価格に反映させる必要があります。
お客様が満足し、販売する側も適正な利益を得られる。
そして、生産者や流通に携わる人たちにも適切な利益が残る。
これこそが、商売における
「三方よし」の考え方ではないでしょうか。
お互いに首を絞め合う時代から、価値を生み出す時代へ
残念ながら、園芸業界には今も価格競争を中心とした古い商習慣が残っています。
生産者は少しでも高く売りたい。
市場は競争力のある価格で取引したい。
小売店は少しでも安く仕入れ、安く販売したい。
それぞれの立場から考えれば、当然の要求なのかもしれません。
しかし、すべての段階で値下げを求め続ければ、誰かが利益を削ることになります。
生産者の利益が減れば品質や生産体制の維持が難しくなり、
市場や小売店の利益が減れば、サービスや人材への投資ができなくなります。
そして最終的には、業界全体の衰退につながりかねません。
お互いが少しでも安くしようと競い合い、
気がつけば全員が苦しくなっている。
まさに、お互いに首を絞め合っている状態です。
これまで長く続いてきた商習慣も、
物価上昇や金利の変化、
人件費の高騰といった現実を前に、見直しを迫られています。
これからの時代に必要なのは、単に安く売ることではなく、
価格に見合う価値を生み出し、
その価値をお客様に伝えることではないでしょうか。
園芸業界であれば、
植物を育てる楽しさ、
長く花を咲かせるための知識、
暮らしを豊かにする提案など、
価格だけでは測れない価値がたくさんあります。
もちろん、すべての商品を高く売ればよいという話ではありません。
無駄なコストを削り、適正な価格を設定し、納得して購入していただくことが大切です。
時代が変われば、商売のあり方も変わらなければなりません。
今までのやり方や思い込みにとらわれ、安さだけを追い求めていては、
これからの時代を生き残ることは難しくなるでしょう。
薄利多売から、適正な利益と付加価値を重視する商売へ。
園芸業界がこれからも必要とされ、次の世代へとつながっていくために、
私たち一人ひとりが商売のあり方を考え直す時期に来ているのだと思います。
安さを競い合うのではなく、価値を高め合う。
そんな業界に変わっていくことを願っています。





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